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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(う)467号 判決

被告人

芝山秀吉事

曹秉執

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人天野春吉の控訴趣意第一点について。

原判決を検すると、原判決は第一回公判廷に於ける被告人の供述、片岡保、中橋魁の副検事及び司法警察員に対する各供述調書等をいずれも証拠として挙示していることを認め得る。弁護人は、被告人は原審第三回公判廷で、原審第一回公判廷に於ける自己の供述を撤回し、且前記の各書面を証拠とするにつき改めて異議の申立をしたにも拘らず、原審がこれ等の供述及び書類を証拠として、判示の事実を認定したのは違法不当である旨主張するので、審案するに、被告人が公判廷で為した供述は、其の後同人がこれと相容れない供述をしたと否とに拘らず、証拠能力を有するものであることは言うまでもないことであり、又原審第一回公判調書によれば、前記の各書面は、いずれも被告人及び弁護人の同意を得て、適法な証拠調手続を履践したものであることが明であつて、被告人が叙上のごとく、一旦証拠とすることに同意した書面について、しかも証拠調手続の履行後先に与えた同意を撤回することは法律上許されないと解すべきであるから、これ等の書面を証拠として採用し、叙上被告人の第一回公判廷に於ける供述と相まつて判示事実を認定した原判決には何等の違法が存しないと言わねばならぬ。しかも記録によつて原審証拠調の結果より判断すれば原審の事実認定は、まことに相当である。また被告人の副検事に対する三通の供述書中、第二回、第三回というが如き回数の番号に所論のような順序不同があつても、斯様な記載は供述内容の信憑力と直接関連するものでなく、また該調書中の被告人の供述記載は判示認定を不可能ならしめる程度に判示事実と牴触してないから、これ等の諸点に対する論旨は総て理由がない。

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